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最高裁判所第二小法廷 昭和38年(オ)365号 判決

上告人

小野のぶ

ほか七名

右八名訴訟代理人

原長一

木村武

半田和朗

大村金次郎

被上告人

大陸交通株式会社

右訴訟代理人

鍜治千鶴子

鍜治良堅

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人原長一の上告理由について。

論旨は、本件自動車による死亡事故につき、被上告会社が自動車損害賠償保障法三条にいわゆる自己のため自動車を運行の用に供した者にあたらないと判断した原判決には、同法条の解釈適用を誤まつた違法があるという。

よつて案ずるに、上告人らは、ドライブクラブを経営する被上告会社がその所有の本件自動車を訴外小林雄史(一審被告)に貸し付けたところ、同訴外人がこれを運転使用中に本件事故を起したものであり、被上告会社が自己のため自動車運行の用に供した者にあたると主張して、前記法条に基づく損害賠償を被上告会社に求め、被上告会社は、原審において、本件自動車は被上告会社所有の自家用自動車であるが、これを民法上の組合である訴外杉並ドライブ倶楽部に無償で貸与し、同倶楽部がこれを訴外小林に貸し付け、同訴外人がこれを運転中に本件事故を起したものであると争つたのに対して、原審は、本件事故がドライブクラブ経営者の賃貸した自動車の運行によるものであることが明らかであり、このようにドライブクラブ方式の自動車賃貸業者に対しては右事故につき自動車損害賠償保償法三条の規定による責任を負わせることはできないとして、被上告会社に対する上告人らの本訴請求を棄却したことが明らかである。

しかし、原審の認定によれば右のようないわゆるドライブクラブ方式による自動車賃貸業者から自動車を借り受けた者がこれを運転使用している場合には、自動車賃貸業者としては、借受人の運転使用についてなんら支配力を及ぼし得ないというのであり、このような場合には、右借受人のみが自己のため自動車を運行の用に供する者にあたるものというべく、従つて、右借受人が該自動車を運転使用中にひき起した事故については、自動車賃貸業者を以て前記法条にいわゆる自己のため自動車を運行した者にあたるとして、これに対し前記法案の定める損害賠償責任を負わせることはできないと解するのを相当とする。それゆえ、右と同趣旨の判断に立つて被上告会社に対する上告人らの本件損害賠償請求を理由がないとしてこれを棄却した原判決は正当であつて、これになんら所論の違法は存しない。

論旨は、右と異なる独自の見解を主張して原審の判断を非難するものであつて、採用し得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官奥野健一 裁判官山田作之助 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外)

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